現在の閲覧者数:

(c)新藤悟 2005 - All Rights Reserved








(ふう、青空が懐かしいぜ………)


どこか遠い目をしながら碇シンは空を眺めていた。

人はそれを現実逃避と言う。


そう、ついさっきまで自分は確かに青空の下に居たはずなのだ。
何故、今俺はこんなところに居る?
何故俺はこんなことをしなきゃいけない?
何故………俺の目の前にこいつが居る?


そう内心でボヤキながら再び視線を虚空にさまよわせる。

………どうやらもうしばらくシンの現実逃避は続くらしい。


そこで置いてけぼりにされてる少女がポツリと呟いた。


「……いい加減始めたいんだけど…」


そんな少女―――ミナモという―――の呟きはあるはずも無い風に寂しくさらわれていった。













決戦!?第三新東京市(らしき場所)
















現実逃避をそこそこに済ませたシンは改めて現在の状況を確認する。

そう、ここには空を見上げても見慣れた空なんぞどこにも無い。
一体どうして自分がここに居るのか、思い出したくも無い記憶をシンは探り始めた。


(あれは確か……)


俺は普通に街中を歩いていたはずだ。
ていうか、それ以外何もしてないし。

なのに、突然、自分と同じ顔したどっかの平行世界らしきアイツが現れて、朗らかに笑いながら言いやがったんだったな。


「ゴメンね、君には何の恨みも無いんだけど、そろそろ彼女の精神がかなり危ない方に行っちゃいそうだから。」


白銀の髪を持つ、どうやら神様らしい(正確には違うらしいがそんなことはどうでもいい)シンジの奴が目を閉じた瞬間だったな…
それで、急に世界が真っ暗になったと思ったらここだ。

全く持ってふざけた話だ。


シンは盛大な溜息をつくと辺りを見回した。


今シンが居るのは、どこを見渡しても何も無い、真っ白な空間だった。
180度どころか360度見回してもそこに「もの」と呼ばれるものは何も存在していない。
地面すらも白で統一されており、足の裏から伝わる感覚が無かったらそれこそ不安に並の人間なら押しつぶされるのかも知れない。

まあ、シンは並の人間ではないのだが。


「現実逃避はやっと終わったようね。」


元々が柔和な顔立ちなのだが、今はそれを厳しい表情で崩してしまっているミナモはシンを睨みつけると忌々しそうに吐き捨てた。


「ああ、何とか現実ってものが理解できたよ。」

「そう、それは良かったわ。これでようやく私も思いっきり憂さ晴らしが出来るってものよ。」


そう言うとミナモは怪しく笑い、醜く口元を歪めて体勢を整える。
今にも飛び掛ってきそうなミナモだが、それをシンが遮る。


「だが、一つ分からないことがあるんだが。」

「何よ。」


ミナモは不機嫌そうに戦闘態勢を解く。
中々こんな不機嫌なミナモは見られないだろう。勿論作者自身も見たことは本編では見たことは無い。


「ここはどこだ?それにどうして俺がお前と戦わなきゃならんのだ?」

「質問が二つになってるわよ。」

「細かいことは気にするな。それで?」

「一つ目の質問には僕が答えるよ。」


突如上空から聞こえてきた声に、シンとミナモは揃って見上げた。
そこにはきれいな白銀の髪をしたシンジの姿があった。


「どっから沸いて出てきた?」

「まあどこでもいいじゃない?」


もはやシンジの代名詞(?)とも言えるニコニコスマイルで軽く流したシンジはどこから取り出したのか厚い黒縁メガネを掛け、これまたどこから取り出したのか、指し棒を片手に説明し始めた。


「それもどこから出したんだ?」

「えっと、ここがどこかってことだけど。」

「おい。」


シンの突っ込みもスルーするとシンジは気にすることなく説明を始める。


「ここは簡単に言うと異空間だね。感覚的にはレリエルの中みたいなものだよ。」

「……確か、あそこはこんなのじゃなかったと思うが?」


突っ込みを諦めたシンは心持ち疲れた表情でシンジに問い返す。


「だから感覚的に、だよ。光も何も無い真っ暗なとこは嫌でしょ?」

「まあ、確かにな。でも真っ白なのは何でなんだ?」

「そこら辺はまあ、仕様、ってことで。」

「要するに作者がそこら辺を考えるのを面倒臭がったのよ。」

「なんだよ、作者って。」

「二人とも、それは言わないお約束だよ。」


お約束ってなんだよ、とシンは言おうとしたが、どうせまともな返事は返ってこないだろうと思い、突っ込みは控えた。

………正直助かる。作者として。

ゲフン、ゲフン。いや、失礼。



「?なんか変な声が聞こえたけど?」

「気のせいだろ。」

「そう?」

「それより、一つ目の答えは分かった。納得は行かないがな。

 で、二つ目だが……」


そこまで言ったところで、ミナモの表情が再び険しいものに変わった。


「それは自分がよく知っているはずよ。」

「そうなのか?俺にはまるっきり心当たりが無いんだが。」

「忘れたとは言わせないわよ!アンタがいっつも何をやっていたか!」

「いや…ホントに思い当たる節が無いんだけどな……」

「ムキー!ムカつくわね!
 
いいわ、教えてあげるわ!アンタが私に何をしたか!」


髪が逆立ちそうなほどの怒気を上げ、ミナモの周囲にはなにやらオーラのようなものが立ち上っている。
ミナモのその勢いに押され、シンは冷や汗を掻きながら少し後ずさる。

ちなみにシンジはいつの間にか上空へ退避しており、


「じゃ〜ね〜」


と地上のシンに手を振るとどこかへ消えてしまった。

触らぬ神にたたりなし、である。

どうもそれは神様にとっても共通のことらしい。


呆然と消え去った神様らしき人物を見送っていたシンを尻目に、ミナモはフッとさっきまでのオーラを消し、遠くをボンヤリと眺めて語りだした。


「そう、あれはそろそろ自分の存在意義について悩み始めた頃だったわ…」

「なんだ、そりゃ。」

「辛いながらも表面上は何気ない様を取り繕っていたわ。

 自分の仕事をきちんとこなして、何気なく舞台裏へ足を運んだ時のことよ。全ての始まりは。」

「舞台裏って………

 ああ、なるほどな…。」

「やっと思い出したようね。」


ミナモに頷くとシンはその時の事を思い出してみる。










○シン :でたらめだな。おい
ユ○ドラ:気にしない、気にしない。でもこれからの戦いは向こうの○ナモよりも
     シンジよりもシンの方が強いから。圧倒的にね。





碇シ○ :そうだな・・・・・とりあえず、俺は主人公だから登場は大丈夫だな?
碇○キ :私もヒロインですよね?
ユ○ドラ:ああ、大丈夫だよ。あちらのミ○モより影も薄くなければ登場回数も二人とも多いからさ。安心して良いよ。
どこかの誰かさんよりね・・・・・。
碇シ○ :良かった〜。○ナモさんより登場できるんですね。
ユグ○ラ:登場回数は多いし、シンの方が圧倒的に強い。ちなみにシンには最狂の能力が
     隠されている・・・・この瞳にね。
碇○ン :それ以上言わない!!!ネタばれだ!!!
○グドラ:この能力がある限り、ミナ○には100%負けないし、シキに関してはそこにいる人より美形予定だよ。
○シキ :わ〜い!!!そこの女の人、私が勝ったわね(ニヤリッ)





ユグド○:そうだよね。そして○ナモさん活躍おめでとうございます
シ○:おめでとう。昔も今も目立たないキャラだけどよくやってるよ













「ああ、そう言えばそんなことも言ってたな。」

「そんなことですって!!その言葉にどれだけ私が傷ついたか!

 アンタに分かる。ヒロインだ、なんだと言われながらも作品中で出番は主要キャラ中一番少なく!誰も優しい言葉をかけてくれず!

更にはアンタ達にまで馬鹿にされて!」

「そんなこと言われてもなあ…。

 と言うか、俺はほとんど何もお前については言ってないんだが……」

「うるさい!問答無用!!」

「うわっ!」


叫ぶとミナモはいきなりシンに襲い掛かるが、それをかろうじてシンは避ける。
だが、かわし切れなかったのか、シンの頬に紅い一本の筋が流れ落ちる。
頬を流れる血を拭うと、シンはミナモをゆっくりと見遣った。


「どうやら逃がしてはくれないみたいだな…」

「そもそも私が考えを改めるとでも思ってたの?」

「いや、わざわざこんなステージまで用意してくれたんだ。最初っから分かってはいたんだがな。」

「じゃ、始めましょうか。」

「やれやれ、あんまり女の子には手を上げたくないんだがな……」

「あら?ちゃんとそう認識してくれてるのね?」

「そうしたいところだが、残念ながらその考えは改めないといけないらしいな。
 
それにちょうどいい。一回、本気でどっちが強いか確かめたかった気がないと言ったら嘘になる。」

「奇遇ね。私もよ。」


間合いを取りシンに向かって構えるミナモ。

シンも自らの武器である鎖を取り出して戦闘体勢に入る。


ギャグなのかシリアスなのか分からない展開はいよいよシリアスへと向かっていった。






シンは鎖を軽く振り下ろす。
ガチャガチャと鎖同士が擦れ合う音を立てながら、それらはまるで意志を持った生き物のように複雑な動きを見せる。

対してミナモは武器を持っていない。
腰を低く落とし、いつでも動けるよう、シンの動き一つ一つに集中する。
自らが持つ、鋭い牙を相手に穿つ為に。


どちらからも動こうとせず、時間だけがただ流れる。
音もなく、また光の変化すら起こらない空間でどれ位の時間が経過したか分からない。
呼吸音だけがお互いの耳に届く。

膠着状態を打ち破ったのは以外にもミナモだった。
シンの呼吸のタイミングを読み、吐き出した瞬間を狙って地面を蹴る。

ミナモの最大の武器は人外ゆえの驚異的な身体能力である。
全身の筋肉を最大限に使った爆発的な瞬発力と加速力で一気にシンと間合いを詰める。
その自らの肉体に加え、微小なA.Tフィールドを発生させて更なる加速をする。

虚を突かれた状態になったシンだったが、数年に及ぶ経験によるものか、体を後ろに倒して威力を吸収する。
が、それでも吸収し切れなかったのか、激しく後ろへと吹き飛ばされる。


「ガッ!!」


胃の方からすっぱいものが込み上げてくるのを感じたが、シンはかろうじてそれを堪え、鎖の先端に重りを集中させ、前に放り投げる。
重心が前へと移動し、シンの体がようやく止まる。
だが、息をつく間もなくミナモが更に間合いを詰め、一気に攻勢へ出た。

シンの方もそれを予測していたのか、不完全な体勢ながらもかわしていく。
シュッ!シュッ!と空気を切り裂いていく音がシンの耳にうるさいくらいに響き、鼓膜を震わせる。

ミナモの攻勢が続く中、中々攻撃が当たらないことに少し焦ったのか、珍しくパンチが大振りになってしまった。
当然シンはそれを見逃すことは無く、素早く鎖を振りぬいた。


「しまっ………!!」


一瞬にして数トンにもなる重さへと変化したそれは、バランスを崩したミナモの体の中心へヒットし、セリフを終いまで言わせず吹き飛ばす。
背後にあった建物にぶち当たり、壁を崩して激しい砂埃が辺りに立ち込めた。



………(注:何故異空間に建物があるかはこの際忘れよーう!)



今度はシンが一気に攻勢に出ようとするが、ある程度間合いを詰めたところで急に立ち止まる。
突然シンは体を左にひねって何かをかわした。
その瞬間、シンの右頬に鋭利な切り傷が一本走り、真紅の血がつうっ、と垂れる。

チッ、と舌打ちしながら瓦礫を押しのけてミナモが姿を現す。


「小型のA.Tフィールドをブーメランのようにして飛ばしたか。器用なことだ。」

「へえ、すごいわね。見えないはずなのによく分かったわね。」

「これでもA.Tフィールドは一時期大分扱っていたんでな。それにお前が何者なのかを知っていれば当たりをつけるのは難しいことじゃない。」

「そういえばアンタも「シンジ」だったわね。」

「まあな。
 
今度はこっちから行くぞ!!」


言うが早いか、シンは鎖をミナモに向かって叩きつける。
見た目とは全く異なる質量を持つそれは凄まじい速度でミナモに飛んでいくが、それをミナモは上へ飛んで避ける。

凄まじい轟音と砂埃が舞い、ミナモがいた場所には大きなクレーターが出来ていた。


「はー…全く何て威力してんのよ?」

「それを食らって平然としているお前に言われたくはない。」


そう会話を交わす間もミナモは避けつつ時たま反撃を繰り出し、シンの方も数トンはある鎖を自在に操りながら蹴りを繰り出している。
とても人間とは思えない動きをしながら、だがどこか余裕をお互いに残しながら二人の攻防は続く。


「その鎖何で出来てんの?」

「企業秘密だ。」

「赤木博士が眼の色変えて襲い掛かってきそうね。」

「もうすでに何度か追いかけられた。」



その時、某組織の一室で猫好きの博士がくしゃみをしたとかしないとか…



「あ、やっぱり?」

「無駄話は終わりだ!」


そう叫ぶとシンは繰り出す攻撃の速度を一段と速めた。
先ほどまで余裕を持って話していたミナモだったが、今度はそんな余裕も無く、シンの攻撃をさばくのに手一杯になる。


「もらった!!」


シンがそう叫ぶと同時に鎖がミナモの腕に巻きつく。
そして、次の瞬間には、ミナモの右腕は宙を舞っていた。


「………!!」


きれいな放物線を描いて落ちていった自らの腕を呆然とミナモは見送る。

シンはその隙を見逃さず、鋭利な刃と化した鎖を更にミナモへと振るう。


「クッ!!」


刃が届くよりも一瞬早く体をそらして避けると、一旦間合いを取るため、後ろへ下がる。
だがシンはチャンスと見たか、次々と攻撃を仕掛ける。
押し込まれるミナモだったが、ここで逆に強靭なバネを生かして前へと飛び出す。

まさかここで前進するとは予測していなかったシンはミナモの体当たりを食らいよろけた。
ミナモは左手に意識を集中させるとA.Tフィールドをシンに向かって投げる。
不可視のはずのそれをシンは鎖を回転させて弾き返した。
カキン、と何かが当たった音が響き、かろうじてそれを防いだシンだったが、顔を上げた時にはミナモの右足が迫っていた。

咄嗟にガードするが、重い蹴りはガードの上からシンを弾き飛ばす。
しかし、ガードのおかげでバランスを崩しただけであったためすぐに体勢を整えることが出来た。

二人の距離が空き、とりあえずの攻防は終わった。
地面に転がっていたはずのミナモの腕だが、いつの間にか消え、ただ紅い小さな水溜りだけが残っていた。
ミナモの右腕部分からも本来出るはずの血液は無く、袖の部分には染みのようなものが出来ていた。


「ひどい事するわねぇ。結構痛かったわよ。」

「その割には元気そうだな。」

「そうでもないわよ。」


と言いつつ、右手を前に差し出す。

すると、切り取られた部分から徐々に肉が盛り上がり、数秒後には以前あった通りに右手が存在していた。
掌を握ったり開いたりして感触を確かめる。


「驚いたな。そんなことも出来るのか。」

「そうね。アタシにとっては肉体の損傷はあまり意味の無いことだわ。」

「だが、それはお前にとって好ましくないことなんだろう?」

「…一応聞いておくわね。
どうしてそう思うのかしら?」

「お前はS2機関も持ってないんだろ?いや、持ってるけど不完全なもののはずだ。それなのにそんなことをそうそう出来るはずがない。一回回復するだけで激しい疲労を伴うと思うんだが?」


どうだ?、と言わんばかりに自らの推測を口にするシン。
ミナモは大きく溜息をつくと、あっさりと自分の欠点をばらした。


「そうよ。私には使徒が持っているような無限の回復力は無いわ。
それに体力も無尽蔵とは言えない。
だから私としてはさっさとアンタをぶち倒して意気揚々と引き上げたいのよ。」


どうかしら?、と尋ねるミナモにシンは軽く笑って答える。


「断る!…て言いたいところだがな。俺も色々忙しい身なんでな。帰りを待つ人もいるし。」

「と言うことは全く問題は無いわけね?」

「ああ、こんな味も素っ気もない場所から早くおさらばしたいもんだ。」


その刹那、ミナモの視界が黒く染まる。
そして激しい衝撃がミナモの腹部を貫いた。

弾き飛ばされるミナモだが、それをシンは許さない。
蹴りの体勢から体を回転させて素早く鎖を放る。

投げられた鎖は吹っ飛ぶミナモに追いつくと蛇のようにグルグルと体に巻きつこうとする。
ミナモはシンの意図に気付いて先ほど復活した右腕を鎖に当てて巻きつける。
そして体勢を整えると、全力で鎖を引っ張った。

ミナモとしてはシンを自分の近くに引き寄せたかったのだろうが、ミナモの予想に反してどれだけ引っ張ってもシンが近づいてくる気配は無い。


「どういう構造してんのよ〜、これ!!」

「企業秘密だ。」


さっきも言ったセリフをシンはまたも繰り返す。


「見た目はただの鎖なのに色々能力があるのね。」

「まあな。」

「まさか、物理的なものだけじゃなくて精神介入まで出来るなんてね。」

「……何のことだ?」

「目が泳いでるわよ。
さっき攻撃の前に急に視界が真っ暗になったわ。何か光るようなものを使った様子も無かった。
それに私の肉体は早々簡単には壊れない。特に内部はね。
となると、何らかしら脳に干渉したとしか思えない。
何も見えなかったけど、アンタが持ってる物はその鎖だけ。

まあ、アンタ自身が特殊な能力を持ってるって線も残ってるけどね。
どう、こんなところかしら?」

「さて、どうかな?」

「別に答えてくれなくてもいいわ。もう同じ手は食わないし。」


そこまで言ってミナモは駆け出した。勝負をつけるために。
それにシンも応じる。

肉体の機能全てにおいてシンはミナモには敵わない。
人と人あらざる者ではその構成、そのものが異なるからだ。
だが、シンは怯まない。彼には手足のように操れる鎖、そしてミナモにはない決定的なものがあるからだ。

それは、経験。

数年にわたって裏の世界にいたシンと生身の戦闘経験の乏しいミナモ。
その経験の差で以ってシンはミナモと互角に渡り合っていた。

あっという間に間合いをつめるミナモ。
本気になったそのスピードは普通の人間には知覚ですら難しいほどである。
シンですらかろうじて彼女の姿を捕らえることが出来るくらいである。
しかし、シンは慌てずその攻撃をさばいていく。
全身で空気の流れを感じ、また経験に裏打ちされる洞察力で次の攻撃を予測し、隙を見てミナモに反撃をする。

一方、ミナモも今度は焦ることなく矢継ぎ早に攻撃を繰り返す。
彼女には確かに経験は無い。
だが、彼女にはあらゆる記憶が存在する。

古今東西を問わず、あらゆる格闘術・暗殺術の達人と呼ばれる人間の記憶が。
経験不足のため錬度は低いものの、それも身体能力でカバーしていく。
記憶の中からそれらを引き出し、技を出していく。

そしてまさに今シンとの戦いの中で急速に経験値を上げていった。

それまで持ち得なかった勘や予測といった物を本人も気付かぬところで成長させていく。
そしてそれは当然のことながら戦いのバランスを崩すものでもあるはずだった。

現在のシンが互角なのは経験によるものが大半であった。
だがミナモが急激なレベルアップをすることでその差が埋まり、絶妙なバランスの上に立っていた攻防を崩すのは必然である。

しかし、一向にどちらか―――考えられるのはミナモではあるが―――が優位になることは無かった。


ブォン!!


ミナモが明らかに重そうな蹴りをシンに向けて繰り出す。
それをシンは力を逃しながらそれを受け流す。
ミナモは蹴りの勢いを生かしてそのまま体を回転させ、裏拳をシンにぶつける。


「つっ!!!」


かろうじて受けるものの、力を逃しきれなかったシンは自らの骨が軋む音を聞いた。
それでもミナモは気を抜かない。
勢いを利用して続け様にパンチを、キックの雨をシンに浴びせる。

シンの額に汗が滲む。
シンは確かな危機を感じていた。
だが、それと同時に高揚した気分に酔いしれていた。
そして、矛盾しているが、危機を必ず脱出できると、何かが囁いていた。

状況は明確にミナモへと傾いていた。

クリーンヒットこそ無いが、すでにシンは防戦一方になっていた。
ミナモの攻撃は当初の単調さは無く、流れるような動きは舞を舞っているかのようである。


「ふっ!!」


掛け声とともにミナモは掌打をシンに向けて放つ。
だがこれはシンははっきりと読めており、上半身を軽く逸らして避け、続いてきた回し蹴りもかがんで避けると、久々の反撃に出るべく鎖を振るう。



「なっ!!」


驚愕の声をあげるシン。
シンの視線の先には自らの最大の武器である鎖。
だがその上にはミナモの足が乗せられていた。

足ごと切り払うことは出来る。
だが重りで攻撃しようとしていたシンは咄嗟に鎖の能力を切り替えることが出来なかった。

今のミナモがその一瞬の間を逃すはずも無い。
彼女の中で最も速い正拳突きがシンの目の前へ迫る。


それはどうしようも無いタイミングだった。
避けようも無いタイミングのそれはシンにヒットする。

はずだった。



シンの目にはミナモの拳がゆっくりと近づいて見えた。
そう、ゆっくりと。
それまでかろうじてしか見えていなかったはずであるのに。



すっと事も無げに高速の拳をかわす。
ヒットを確信していたミナモは信じられない事態に動きを止めてしまった。


「あああああああああっっっ!!!!!!」


叫び声をあげるとシンは渾身の力を込めてミナモごと鎖を振り払う。

空中に浮かび上がったミナモの体を見据えると、シンの体が掻き消える。
ミナモの目にはその動きの残像のみが映る。
気が付けば、ミナモの腹には鎖では無く、シンの拳が突き刺さっていた。


熱いものがシンの中を駆け巡る。
全身から汗が噴出し、服がまとわり付いて気持ち悪いはずであるのに気分は爽快だった。


吹き飛ばされたミナモはバランスを整えると、次なる攻撃に備えて構えを取る。
しかし、チャンスのはずなのにシンは追撃を加えてこない。

シンはゆったりと体を起こすと、ミナモを見ながら笑っていた。

それを見た時、ミナモはこれまでに感じたことの無い高揚感に気付いた。
それはどこかずっと自分の奥底でくすぶっていた思い。

自分を更なる高みへと連れて行ってくれる相手との邂逅の喜びか。

ミナモもシンと同じように小さな笑いを浮かべると、お互いを更に鍛え上げるため、また内から込み上げる戦いへの欲求を満たすべく二人は同時に地面を強く蹴り飛ばした。


激突した二人の周りに激しい風が巻き起こる。

凄まじい攻撃の応酬はお互いに空気を切り裂き、あまりのスピードに一時的に真空状態が発生する。
いわゆるカマイタチが出来、二人の頬を、腕を、足を切り裂いていく。
それでも二人は些細な傷など気にすることなくただひたすらに手を足を動かしていく。

普通の人間なら一撃で死を迎えてしまうような攻撃。

呼吸すらも忘れたかのように、全力の攻撃を繰り出す。

お互いが全力を出し合った戦いは小さな攻撃はヒットするが、致命傷となるものは一向に当たらない。
牽制が当たった後の渾身の一撃をお互いが神懸り的な反応で紙一重のところで避けるのである。

ただ、ただ美しいダンスを踊るように二人はステップを刻む。
二人の他に誰もいない、静かな空間に二人の攻防の音だけがBGMのように響いていた。

























(この後二人は5時間ほど戦っていたが、いい加減戦闘に飽きてきたので描写は割愛させていただきますm(__)m by作者)



ああっ、石を投げないでっ!!(汗)
























5時間後…………


「はあっ、はあっ、はあっ………」

「ぜえっ、ぜえっ………」


息も絶え絶えになりながら二人は睨み合う。
服はすでにボロボロで、あちこちに破れたり、砂埃と汗で汚れたりしている。


「いい加減、限、界が来た、ようね……?」

「そういう、お前こそ…今にも、倒れそうだぞ…?」


どっちもどっちな状況だが、二人はそれに気付かずお互いに口撃しあう。
早く倒れろ、と本気で願いながら。

そのまま二人とも動こうとせずただじっと相手を見つめ続ける。
まあ、二人ともすでに動けないのだが。


終わりの見えないにらみ合いに終止符を打ったのはシンだった。


「……なあ、そろそろやめないか?」

「………そうね……」


そう言った直後、二人の体が糸を切られた人形の様に崩れ落ちる。
向かい合ってうつぶせに倒れた二人は体を仰向けに入れ替えると胸を大きく上下させた。


「……動けるか…?」

「無理ね……。全く動かないわ。アンタは?」

「同じく、だ……。」

「そう………」


戦っている最中、幾度と無くミナモは攻撃にA.Tフィールドを使用し、また自らの体の一部を再生させてきた。
状況によっては腕や足を自分で切り離した時もあった。
その為不完全なS2機関では補いきれないほどのエネルギーを消費していた。
にもかかわらずここまで立っていたのは恐るべきミナモのど根性と言ったところか。

シンはシンで普通の(?)人間なのでそんな無限に戦っていられるはずも無い。
動けば腹も減るし当然疲れる。
なのに5時間も攻防を続けられるシンは一体何者だろうか……?


「これからどうする?」

「ちょっと行かないとならない所がある。」

「奇遇ね。私も行かないといけないとこがあるのよ。」

「そうか。」


そして二人はニヤリ、と笑い合う。
その笑顔はちょっと怖い(汗)というか作者の背中に冷たい汗が流れるのはどうして?


よっ、と声を出しながらシンは起き上がり、ミナモに問いかけた。


「どうしたらここから出られるんだ?」

「ああ、大丈夫よ。もうすぐシンジが来るから。ついでに頼めばあそこに連れて行ってくれると思うわよ。」

「そうか。助かる。」

「別にいいよ。」

「おわっ!!急に出てくるな!」


背後に突如としてシンジが現れ、シンは変なポーズを取りながら後ずさる。


「ゴメンゴメン。それよりもう行く?それとももう少し休んでいく?」

「……いや、今何時か知らんが、大分遅くなってるだろう?」

「そうだね。今外の世界は大体7時くらいかな?」

「だろ?だからさっさと絞めてくるさ。」

「そう?じゃ、行こうか?」

「アイツはいいのか?」


そう言って未だ地面に大の字で寝たままのミナモを見る。


「別にいいわよ〜。私はもう少し休んでからにするから。」


そして手をヒラヒラと振るとミナモの姿は掻き消えた。
いつもの様に痕に紅い水溜りを残して。


「どうなったんだ?」

「ん?ああ、ミナモは基本的には僕の魂と一緒にいるからね。肉体を解放して僕の中で休んでるんだよ。そっちの方が回復が早いからね。」

「全く持ってでたらめな奴だな。」

「君も十分そうだと思うけどね。」

「違いない。」


ひとしきり笑った後、二人の姿もそこから消え去った。







そして………








「あの〜、どうしてここにいるんでしょうか………(汗)」

「ん?どうしてって、やっぱり事の発端を締め上げるのは当然でしょう?」

「で、できればどうして私が原因になってるのか教えていただけないでしょうか(大汗)」

「まず一つ。私の出番が少なかった。
 二つ。今回の話を書いたから。
 これ以上の理由があるかしら?」

「い、いや…そんなにこやか、かつ、恐ろしい形相で言われても………」

「さあ、いいかしら?」

「………さいなら!!」

「あ!コラ!待ちなさい!!」


背後に鋭く研いだナイフを構えて怪しい笑い声を上げるミナモを引き連れながら、俺(作者)はどこか遠くで誰かの叫び声を聞いていた。


「助けてくれ〜〜〜!!」

「俺から逃げられると思うな!!」




………俺の命は後どれ位持つかな?














おしまい………?







あとがき〜ユグドラシル

ユグドラ:シン、どうして、ボロボロなんだ?
シン  :企業秘密だ
シキ  :シンさん?
ユグドラ:それはそうと、本気を出せよ。お前の中にはリミッターがあるから通常の半分以下の力しか出せないだろう?
シン  :ふっ問題ない。ばれなければいい・・・・・向こうは一応女なんだから・・・・
ユグドラ:リミッターを解除すれば、サードインパクトの時に得た力を得られるだろう?
シン  :その力は俺の鎖に全て封印している。それが鎖の能力の源だ。
ユグドラ:まぁ、いいけど。さてと、aveshinさんご協力に感謝いたします。あなたのお陰で実現した物語です。本当にありがとうございました。
シン&シキ:ありがとうございました。これからも俺(私)たちをよろしくお願いいたします。

P.S

ミナモへ

お前との戦闘は楽しかった。はっきり、化け物としか言いようがない。化け物染みた回復能力。力、身体能力。はっきり、恐いです。
ちなみにこの鎖は俺でも破壊することができません。A.Tフィールドを使っても傷一つ付けられないと言うなぞの鎖です。サードインパクトの時に俺の全ての力をこの鎖に詰め込んだら
こんなものになってしまったというわけで、お前とは決着をその内つける。では、キャラコメでこれからもからかわれるけどよろしくお願いいたします♪

碇シンより








shin:えー…この作品に関する苦情、その他は一切受け付けません。


ベゴッ!!!


ミナモ:いきなり出てきて何言ってんのよ!アンタは!!

shin:…い…今…すごい音が…

シンジ:自業自得だね。

ミナモ:さて、皆様。この作品に関する苦情は全面的に受け付けておりますので遠慮無く送っちゃってください。

シンジ:ユグドラシルさんの全面協力でこの作品は完成(?)しましたがどう感じられましても責任はユグドラシルさんにはございませんので。

shin:ひ…ひど……

ミナモ:そこ。うるさい。

シンジ:全く、ギャグセンスのかけらも無いのに中途半端に書いちゃって。

ミナモ:なお、この作品に出てくるシンの鎖の能力についてですが、その本来の能力の半分も発揮できておりません。

シンジ:本当なら色々他に出来るんですが、作者の力不足で書けませんでした。

ミナモ:何卒ご容赦下さい。

    さて、挨拶も終わったことだし、覚悟はいいわね?

shin:な…何をする気だ…?

ミナモ:あら?まさかあれだけでおしおきが終わったとでも思ってたのかしら?手が切り飛ばされるのってかなり痛いのよ?

shin:ははは……さいなら!

シンジ:あ、逃げた。

ミナモ:コラ!待ちなさい!!

シンジ:おっと、最後に

    ユグドラシルさん、どうもありがとうございました。今後もよろしくお願いします。






二次創作一覧に戻る

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送