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「代償」




あるオカルト好きの男がいた
ある日 男は行きつけの古書店で奇妙な本を見つけた
表紙には何も書かれず ただ不気味が絵が描かれているのみ
その姿は まるで悪魔のようにも見えた

「これは何だ」

男は店員に本の事を訊ねる すると店員は

「悪魔の召喚の方法が書かれた本ですな」

と返してきた
男はオカルト好きではあったが 非科学的すぎると思った・・・が 興味はある

「本当に悪魔が召喚できるのか?」
「私は存じかねます 何しろ 私はその召喚の瞬間を目にしたことはないですし」
「それはもっともだ なら 私が試してやろう この本 私が買う」

男は家に帰るなり 早速本を開く
本には召喚のための道具と手順が記されていた
男は手っ取り早く用意を揃え 儀式に取り掛かった

・・・
・・・
すべての工程が終わった
その瞬間 目の前に影が現れた 影は段々と形を変え 表紙に描かれているような悪魔の姿になった

「本当に現れるとは」

悪魔が大きな目で男を睨みつける

「儂を呼んだのはお前か?」

悪魔が大きな口を開き 話す

「あ ああ そうだ 私だ だったら何だというのだ」

悪魔を目の前に男は震える その姿を見て悪魔は笑った

「呼び出しておいて恐れをなすか 妙な人間よ」
「お お前は何をするのだ」
「何をする・・・か そうだな 封印が解けて気分が良い お前の望みを叶えてやろう」
「望み・・・だと?」
「ああ 何でも望むが良い 好きなだけ叶えてやろう
 ただし 儂も悪魔 代償はきっちり頂くがな」

代償 その言葉に男は不安を感じた もしかして命を取られるかもしれない そのような危機感も頭をかすめる
が 男の心を読んだかのように悪魔がこう付け加えた

「案ずるな 命は取らん 代償は別のものだ」

ならばと男は悪魔に大金を望んだ
すると悪魔が消えた 
暫くの間 静寂が流れる

「消えたのか? やはり嘘であったか」

と その瞬間 悪魔が再び現れる
その手には札束が握られている

「望みの金だ」

紛れもなく金だった シワひとつ無い綺麗な札束だった

「なんと さすがは悪魔 こいつは素晴らしい」
「他に望みはないのか?」
「何でもやると言ったな なら 私は憎い相手がいる 是非 息の根を止めてきてくれ」

男は相手の写真を悪魔に見せる 

「承知した」

悪魔が消えた と台所の方からガタガタガタと音がした

「そうか 先ほどの金といい 姿を消して動いているのだな これは素晴らしい」

やがて 悪魔が戻ってくる

「殺してきたぞ 望みのままにな」
「おお なんと仕事の早い」
「他に望みはないのか?」
「いや 結構だ 満足させてもらったよ」
「そうか なら儂は消える そうそう 代償はきちんと頂いた それじゃあな」

そう言い残し 悪魔は消えた

「頂いた?」

悪魔の言葉が理解できぬまま 男は眠りにつく



翌朝
インターホンが鳴る音で目が覚める
玄関に出ると 見慣れぬ男たち

「どちら様ですか?」
「警察です」

警察手帳を見せつけられる

「この近くで何か事件でも あいにく私は何も・・・」
「いえ あなたに強盗と殺人の容疑がかかってます」
「何? 私は知らんぞ」
「続きは署で聞こう」

男はなすがままに警察署に連行される

「これは何かの間違いだ!」

叫ぶ男をよそに 刑事がビデオを流す

「昨日強盗があった場所の監視カメラの映像だ 紛れもなくこれはお前だろう」

たしかに そこには男の姿が映し出されていた

「嘘だろ・・・」
「そして殺人の件だが 被害者の自宅から血の付いた包丁を持ったお前が去るのを近所の人が目撃している
それどころか お前はわざわざ目撃者に個人情報をべらべらと話したそうじゃないか? 一体何を考えているんだ?」
「違う! 私じゃない! 私じゃない!!」

誰も耳は貸さなかった
突然 悪魔の声が聞こえる

「代償は頂いた お前の社会的信用という お前の望みにふさわしい代償をな・・・」









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