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epilogue 









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(c)新藤悟 2005 - All Rights Reserved







崩れそうな脚を叱咤しながらリンシンは走った。
すでにこの区画は日常的に使用されていないのか、足元の非常灯のみがリンシンを照らす。数メートル先の道さえ暗く、仄かな非常灯だけが行く先を示す。背後からの足音に怯えながらひたすらにリンシンは逃げ続けた。
追いかける彼らは無言だ。言葉を発せずにリンシンから付かず離れずの距離を保ちながら、だが着実に少しずつ距離を詰めてきている。先ほどはリンシンの優れた聴覚でかろうじて捉えられる程度だったが、今振り返ってみればすでに足元のブーツが見える程度にまで近づいている。
突然の発砲音。リンシンに向かって彼らから放たれた弾丸は、だがリンシンの傍らの壁に当たって火花を散らす。その音にリンシンは一瞬身を竦ませて、それでも折れること無く出口を探して辺りを見渡す。だが、先程からずっと一本道で、時折曲がり角があっても分岐は無い。また部屋の入口はあってもどこか出口に繋がりそうな道も未だ発見できてはいなかった。

「こ、の……なのです!」

 リンシンはもう一度振り返った。うっすらと目視で確認できる程度の追跡者を彼女の黒い眼が捉えて、詠唱もなく魔術を行使する。
励起した魔素を介して相手の精神に介入。立ち止まったリンシンの幻影を見せて距離を稼ごうとする。しかし追いかける武装魔術師たちの脚が止まることは無く、まるで魔術の発動が無かったかの様にリンシンを追いかけ続けた。
熱魔術や電気魔術が物理的に現実に作用するのに対して、情報魔術、とりわけ精神魔術は対象者の精神に作用する。前者は発動してしまえば、大小はあれども必ず相手にダメージを与え、ダメージ具合を決めるのは肉体的な防御力と魔術の威力だ。対して後者は精神力、つまりは意思の強さと魔術に対する耐性、いわゆる抗魔術と呼ばれるものに左右される。そして特に抗魔術は魔術の実力に比例すると言われている。
つまり。

「やっぱり私より強いってことなのですか……!」

 すでにリンシンが魔術を行使するのは三度を数える。そのいずれもが何の効力も発せず終わった事を鑑みると、相手の魔術的な実力はリンシンよりもずっと高いことになる。それを証明するように、そしてリンシンの魔術に対する返礼とでも言わんばかりに銃弾が彼女の頬を掠めた。
一瞬だけ緩めた足取りを、歯を食い縛ってまた加速する。埃っぽい空気がリンシンの鼻をツンと突いた。髪の毛の先で覗く耳が折れ、涙が滲んだ。
必死で逃げる彼女の中を不安が過る。それは先程の研究室らしき場所に残してきた両親のことであり、仲間の獏の事であり、そして自分を逃して部屋に残ったタマキの事だった。
タマキと出会って以来、リンシンの傍には出来るだけ彼女が居てくれた。彼女の友人を助けるために奔走する傍ら、その貴重な時間を割いては不安に陥りそうなリンシンの傍でずっと励ましてくれた。リンシンの親を探すのを手伝ってくれた。疲れているだろうに、その労苦を見せること無く頭を撫で、優しく抱きしめてくれた。

「辛かったら泣いても良いですのよ」

 そうして不安と寂しさに潰れそうなリンシンを支えてくれた。
自分は獏でタマキは人間。決して人間と魔物の関係が良好では無いというのに、その垣根など始めから無かったかの様に彼女は接してくれた。
一度「どうして」とリンシンはタマキに問うた事があった。何故、出会ったばかりの自分に対して優しくしてくれるのか、と。どうして、関係のない自分たちの為に骨を折ってくれるのか、と。
すると、彼女は答えてくれた。困ったような顔をして。

「ワタクシが助けてあげたいと思った。それだけではいけないですの?」

 そして少し間が空いた後、タマキの友人が寝ている病室の窓の外を眺めた。

「でも……もし理由を付けるとしたら、それはきっとアナタの為では無く、ワタクシ自身の為ですわ」
「タマキお姉さんの、ですか?」
「そうですわ。ワタクシは……ずっと家族に憧れていましたの。父と母が笑い合って、助け合って生きていく家族。そして子供は何も考えず、無邪気に、思いのままに過ごす。可能性を可能性ではなくて、当たり前の約束された将来と信じて成長していく。そんな家族を夢見ていましたの」
「……できなかったの……ですか?」

 リンシンが尋ねると、彼女は緩々と首を振った。

「だからワタクシはリンシン、アナタを助けたいのでしょうね。アナタまでその当たり前の時間を理不尽に奪われてほしくないから。ワタクシが夢見る家族のままで居てほしいから。そして、最終的にワタクシもその中に出来ることなら混ざれるなら、最早至上の喜びですわ」

 そう言って、タマキは寂しそうな眼差しでリンシンを見つめたのだった。

「お姉さん……どうか無事でいて欲しいのです……」

 出会って以来ずっと自分を助けてくれているタマキを案じる言葉が、無意識にリンシンの口から零れた。滲む涙を腕でグイッと拭い、そして両親を、タマキを助けるためには一刻も早く外に出て、コウジたちに助けを求めなければと気持ちを改めた。

「エゴ・ベルトナム……」

 だがその気持ちを咎めるかのごとく、背後からの詠唱。気がつけば、追手はすでに薄暗い中でもはっきりと視認できるほどにまで近づいていた。
リンシンは加速した。残りの体力を考えることは止め、今を逃げ切ることにまず全力を尽くそうと両足に力を込めた。
やや開きかける両者の距離。だが、一発の銃弾がそれを阻んだ。

「あうう……っ!」

 詠唱が続く中で放たれた銃弾。魔術の方にばかり気を取られていたリンシンは反応できない。対魔術師・魔物用の、貫通力に優れた弾は未だ身体的に未熟なリンシンの左脚を貫いていき、転倒したリンシンの血飛沫が通路の床を濡らした。

「諦めるんだな。どのみち、この先に君が望む逃げ道は無い」

 低い男の声が通路に響く。絶望を突き付ける声に、だがリンシンは耳を貸さずに立ち上がろうともがいた。魔術を行使し、何としても逃げようと試みるが返答は不可視の衝撃だった。
空気の塊で殴られ、リンシンは壁に叩きつけられた。強く頭を打ち付け、意識が揺らぐ中で、リンシンを警戒してか距離をとっていた三人の男たちが少しずつ近寄ってくる。
逃げねば。その想いばかり逸るリンシン。だが、ブレる視界の中、平衡感覚を失って立つこともままならない。
そして、彼女の頭に拳銃が押し当てられた。

「子供を殺すのは趣味では無いが……悪く思うなよ」

 死の薫り。男三人に囲まれて、後は人差し指を軽く引けばリンシンの命は潰える。
時の流れが止まった。リンシンにはその様に感じられた。
――死にたく、ない。
想いが溢れる。心の奥底から意図せずして言葉にならない感情がこみ上げてくる。

「い、や……」

 全身が凍りついていく。撃たれた脚の痛みも感じなくなり、男たちが話す声も何も届かない。
お父さん。お母さん。彼女は親を呼んだ。在りし日の、わずか一ヶ月前の幸せな家族の景色が記憶の中で鮮やかに思い起こされた。
タマキお姉さん。新しい姉の名を呼ぶ。これまで力になってくれた彼女に助けを求める。だが、彼女はここにはいない。

「いや、なのです……!」

 透き通った双眸から涙が零れた。絶望の中にある希望を見つけようと彼女は願った。
 ヒカリお兄さん、スバルお兄さん、ユキヒロお兄さん。誰か。誰でもいい。誰か私を――

「――助けてください……っ!」

 彼女は声を押し殺して叫んだ。その声はか細く不安に揺れ、付近の廊下にかろうじて響いた程度だった。
だが。

「任せとけ」

 リンシンの耳にその声は届いた。
同時に、崩落。リンシンの後方で天井が前触れ無く破壊され、建材の数々が崩れ落ちて通路に散らばっていく。
もうもうと立ち込める砂埃。息苦しさを覚える程の密度のそれと突然の爆発とも取れる破壊にリンシンは咄嗟に眼を閉じた。

「どうやら間に合ったみたいだな」

 轟音が収まりかけた最中で通路に響く声。恐る恐るリンシンが眼を開けると――

「車いす……?」

 破片がアチコチに散らばっている中、ある一箇所だけまるで台風の眼の様に砂埃一つ落ちていない領域が存在していた。その中には車いすが一台だけあり、椅子の上には一人鎮座している。
真紅と呼べる程に濃い紅の髪。耳が僅かに隠れる程度の短い髪で、少し釣り上がった目尻は浮かべた薄い笑みによって皺がよっている。口には一本のタバコが咥えられ、楽しそうに壁に寄りかかって座るリンシンを見下ろした。

「お前がリンシンで間違いねーよな?」
「は、はいなのです」

 呆気にとられていたリンシンは尋ねられて慌てて返事をする。するとその人物は何が楽しいのかタバコを咥えたまま吹かし、笑みをますます深くした。
 リンシンはその人を見上げた。体格は小柄の様だが車いすに座っているせいで正確にはよくわからない。整った容姿に浮かべている表情から勝ち気な性格が伺えるが、短髪の上中性的な見た目のせいで性別も判別が難しい。だが胸部の微かな膨らみからその人が女性だと分かった。
彼女は何者なのか。どうして天井から落ちてきたのか。自分の事を知っている様だが何をしに現れたのか。彼女は……敵なのか。多くの疑問が溢れ、また自分を知っているからといって容易く味方だと信じてしまえるほどリンシンの置かれた状況に余裕は無い。
女性が見下ろし、リンシンが見上げて、期せずして互いに見つめ合う状態になったが、そこに男たちの鋭い声が飛んでくる。

「何者だ、貴様っ……!」

 銃口を女性に向け、いつでも発砲できるように照準を合わせる。引き金には指が掛かり、指に少し力を込めるだけで女性の体は鉛の弾に貫かれてしまう。つい数分前まで自分が置かれていた状況を思い出し、リンシンの体が小さく震えた。

「いや、良かったぜ。スバルに頼まれて来てみたわいいけどよ、上は誰もいねーし、んじゃ下かとは思ったけど降りる場所は見つかんねーしな」

 だが、女性はその銃口が眼に入らないかの様に自然体でリンシンに話し掛けた。

「スバルお兄さんに、ですか?」

 スバルの名前が出たことでリンシンの緊張が僅かに解れる。安堵がドッと体を満たしていき、体から力が抜ける感覚がして、しかしすぐに状況を思い出して突きつけられている銃口を横目に見ながら会話を続けて良いものか判断が着かず言葉が続かない。
一方で女性の方は変わらず緊張感を感じさせない口調で鷹揚に頷いてみせた。

「ああ、そうだ。あんにゃろう、場所だけ教えて丸投げしやがった。なぁにが『後はお願い☆』だよ。このアタシを顎で使いやがって、まったくよぉ、だいたいアイツは……」
「答えろぉっ!!」

 呑気にも愚痴を零し始めた女性に、苛立った男が激昂して怒鳴り声を上げた。眉間に皺を寄せ、蟀谷に青筋を立てて威嚇するように構えた拳銃で音を鳴らす。その音にリンシンは震え、体を小さくして男の顔を見た。
武装した男は憤怒と警戒を露わにしている。だが男たちの眼にはコケにされた怒り以外の感情が見え隠れしている様にリンシンには思えた。

「あぁ?」

 会話を遮られた女性は一際低い唸りを上げた。まるで街中にたむろする不良が相手を威嚇する時のように上げる声で、鉄火場を数多くくぐり抜けてきた男たちには、普通ならば何の痛痒も与えられない類のものだ。
だがその声を聞いた瞬間、リンシンは心臓を掴まれた様に錯覚した。死んだ。先ほどまでの様に銃口を頭に直接突きつけられた時よりも明白にそう思えた。
そしてそれは男たちにしても同様だった。銃口は変わらず女性に向けられている。引き金にも指は掛かっている。だがその銃口は三人共小刻みに震え、睨みつけていたはずのその表情には恐怖が多分に入り混じって眉尻が下がり、歯がカチカチと不規則に音を立ててしまっていた。

「失せろ」

 車いすの女性はそれだけを呟いた。
瞬間、女性の行く手を遮っていた男たちの体が宙を舞った。トラックに跳ねられたかの様な勢いでコンクリートの壁に背中から叩きつけられ、被っていたヘルメットが砕け散った。
紅い花が咲いた。
砕けた破片と共に男たちの体が貼り付けられた壁から落ちる。男はそのまま力なく四肢を床に投げ出し、受け身を取ること無く横倒しになった。女性が落ちてきた際の建材の隙間を血が埋めていく。

「よしっ、んじゃさっさと行こうぜ? もう一人助けてやんなきゃいけねー奴がいるからな」

 通路を遮る「物」が何も居なくなった事を認めると、女性のプレッシャーは消え去り、何事も無かった様にリンシンに声を掛ける。
一瞬の出来事に呆けてしまっていたリンシンは声も出ず、すれ違いざまに女性から頭を撫でられてようやく我に返って立ち上がろうとする。

「痛っ……」

 しかし、脚に受けた傷のせいでうまく立ち上がれず、すぐにうずくまってしまう。

「ああ、怪我してたのか。気づかなくてワリィな」

 女性がそう言うと同時にリンシンの体が浮き上がった。そのまま脚が床を離れ、フワフワと宙に浮く。思ってもいなかった突然の事態に「わっわっ!」と手脚をバタつかせるが、女性は、

「心配すんな。落としゃしねーよ」

 と、どこ吹く風。文字通り地に足が着かない状況に心細さを覚えるも、女性が下ろす気も無いようで、またリンシン自身もまともに歩けそうもないため観念して大人しくする事にした。
車いすが一人と空中遊泳中が一人。奇妙な取り合わせになった二人が改めて去ろうとする。
 その時、幾分グッタリとしたリンシンの耳に微かな金属音が届く。その音が何の音であるか、明確に把握する前にほとんど反射的に振り向く。
それと同時、一発の銃声が響いた。
 そして静寂。
そして沈黙。
時が止まって痛いほどの静けさが通路を支配し、その中でリンシンの眼は一点に釘付けになっていた。
先ほどまで倒れていた男の一人が放った銃弾。男の射撃の腕を示しているであろうそれは女性の後頭部目掛けて寸分の狂いなく向かっていって「いた」。
だが銃弾は届いていなかった。特徴的な真紅の髪の数センチ手前でピタリと停止していた。
静止した弾がカラン、と音を立てて床に落ちた。それを合図としたように、女性はゆっくりと振り返り、タバコの煙を吐き出しながら男を見下した。

「ば、化物……っ!」
「褒めてくれてありがとよ」

 震える声の罵倒に感情のこもらない答えを返す。そしてため息混じりに深く紫煙を吸い込むと男を睨みつけた。

「っ!!」

 睨まれた瞬間、男の左腕が意思に反して勝手に震えだす。突然の事に戦慄を覚え、訳がわからないながらも泣きそうな顔で慌てて右腕で抑えるも抑えきれず、間を置かずして腕が捻り上げられていく。
 そして。

「うぎゃああああああぁぁっ!!」

 男の腕が千切れ落ちた。切断面から夥しい血を流しながら、痛みに絶叫する。

「さっさと治療すればまだ腕はひっつくぜ? せっかく拾った命だから大切にな」

その光景を涼しい顔で眺めていた女性だが、男に対する興味を早々に失ってぞんざいな様子でそれだけを告げると、「じゃあな」とすでに女性の方を見ていない男に向かって手をヒラヒラと振って車いすを進めていった。
リンシンは宙に浮いたまま唖然として、女性に連れられて元来た道を戻っていく。自分が殺されそうになったとは言え、一方的にやられてしまった男たちの事が心配で、リンシンはずっと倒れてしまった男たちの方を見ていたが、そこに女性から声が掛かる。

「心配すんな。少なくとも殺しちゃいねーよ。てゆうか、お前も殺されそうだったんだろ? ンな相手を心配するなんざ随分とお人好しじゃねーか」
「そういうわけじゃ無いのです。けれども、やっぱり人を傷つけるのは嫌いです……」
「んじゃ俺の事も嫌いか?」

 そう尋ねる女性にリンシンは即座に首を横に振った。

「嫌いじゃないのです。わざわざ助けに来てくれた人を嫌いになんてなれないのです。それに……」
「それに?」
「お姉さん、さっきの人を傷つける時、凄く辛そうな顔してたのです」

 そう言って曇り無い眼で真っ直ぐに顔を見てくるリンシンに、女性はタバコを咥えたまま顔を伏せて頭をガシガシと掻きむしった。

「まったく……どうして俺の周りにはこんな奴ばっか集まんのかねぇ……」

 ため息混じりにそうぼやく女性。と、リンシンはふと自分が女性の名前を聞いていないことを思い出した。

「そういえば、お姉さんの名前を聞いてなかったのです。お姉さんは私の名前を知ってるのに、私はお姉さんの名前を知らないのはおかしいのです」
「ああ、そういやまだ名乗って無かったな」

 ズボンのポケットから灰皿を取り出して、咥えていたタバコを押し当てて消す。肺に溜まっていた煙を吐き出し、またタバコを一本取り出すとまたすぐに吸い始める。そして大きく一息吸い込んだ後、女性は煙と一緒に自らの名前を吐き出した。

「ミサト、だ。ヒカリとスバルあのバカどもと腐れ縁の柏木ミサトだよ」




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 轟音が収まり、部屋に静寂が徐々に戻り始める。先ほどまで水をばら撒いていたスプリンクラーは爆発の影響で壊れて、今はチョロチョロとした一筋の水流となって、心細く床へと流れ落ちている。
広大な空間の、あらゆるものが無残に破壊された実験室。設備のパイプは折れ曲がって亀裂が走っている。頑丈な鉄壁はひしゃげて原型を無くし、その様が如実に爆発の威力を物語っている。

「く……」

 その中にうめき声が一つ響いた。トパーズは壁にもたれ掛かる様にして気を失っていたが、全身を苛む痛みに徐々に意識が覚醒に近づいていく。

「クソっ、タレが……」

 頭部から流れ落ちる血で半分が塞がった視界が、徐々に鮮明になっていく。頭を打ち付けた衝撃で未だに平衡感覚が戻っていないが、それでもトパーズは擦り傷だらけの両足で立ち上がった。脚に致命的なダメージが無かったのは僥倖。だが左腕は骨折しているようで、少し動かすだけでも激痛が走る。右腕も吹き飛ばされる際に何か金属が貫通したらしく、前腕部からは血が流れ落ち続けていた。
もっとも、この程度の怪我はヴァイス所属時代にも数えきれない程負っている。骨折も単純骨折で済んだようで、動かそうと思えば動かせる。回復力を考え、恐らくは一、二週間もあれば痛みも無く動かせる様にはなるだろう。それでも全身に負ったダメージはかなり深刻で、万全の時と比べれば戦闘力は半減といったところか。

「やってくれるぜ……」

 相手の捨て身の攻撃に怒りを覚えながらも、冷静にトパーズは自分の体の状態をそう分析した。これもヴァイス時代に叩きこまれた習慣だ。あの組織が嫌で、上官を殺してまで出奔したというのに当時の習慣が役に立ってしまっている現状が腹立たしい。骨折部でズレてしまった骨の位置を無理やり戻しながら、トパーズは口の中の血を心中の罵声と共に吐き捨てた。
煙が晴れ、トパーズと部屋の中心を挟んで反対側で倒れているタマキの姿をトパーズは認めた。恐らくはトパーズと同じように壁に叩きつけられたのだろう。一部砕けた鉄板の表面にはタマキのものと思われる血の跡がこびりついていた。

「死んじゃいねぇんだろうが……こんな結末は私は認めねーぞ」

 タマキの方へ歩いていきながら、どこか願うような口調でトパーズはそう零した。最初から殺す気だったとはいえ、それは相手が死ねばいいと言うものではない。タマキの事は嫌いだが、だからこそ自らの手で殺すことに意味があるのだ。勝負としては最後に立っていた者の勝ちと言えるだろうが、そんな相手の自殺じみたもので勝ってもトパーズには何の感慨も与えないし、やるせない不満だけが残る。
すぐ傍まで辿り着いたトパーズは、足元に転がるタマキの様子を観察した。来ていた魔技高の訓練服のほとんどは破れ落ち、インナーさえすでに残っておらず、下の秘部はかろうじて隠れているが、胸はほとんど露わになっていてひどい火傷が露わだ。
意識は無く、ほとんど消えかけていそうな浅い呼吸のおかげでかろうじて生きているのは分かるが、腹部の傷の具合などから見て、いかに強い生命力を持つ魔術師といえどもこのまま放置すれば長くはないだろうと思えた。

「くっそつまんねぇけど……殺しちまうか」

 舌打ちしながらトパーズはぼやく。
 あの時、タマキは間違いなく死ぬつもりだった。
魔術師は通常、大気中に漂う魔素を使用するが、それとは別に魔術師自身の体にも魔素は存在する。日々の呼吸で取り込またそれは大気の魔素とは比べ物にならないほど濃密なもので、体内の魔素を媒介に魔術を使えばその威力は比べ物にならない。
 しかし、体内の魔素を使うことは最大の禁忌でもある。
 体内の魔素を抽出して魔術を行使する事はすなわち、文字通り身を削る行為。濃密すぎる魔素は制御が出来ず、まるで制御棒を失った核反応の様に連鎖的に魔素を反応させる。それ故、膨大な威力を発揮するが魔術師にとっての魔素は肉体を構成する要素でもあり、ほぼ間違いなく死を意味する。故にその技術は公には秘密であり、トパーズ自身もヴァイスで最後の手段として教えこまれた故に直前でタマキの狙いに気づけた。
幸いにして反応の瞬間にトパーズが逃れようとタマキの意識を失わせたため、幸運にも魔術反応が途中で停止して半端な威力となり、かつタマキの体を蹴り飛ばして爆心から遠ざかったためにかろうじて一命を取り留めたので互いに生き残ったが、それでもあの威力であった。
ギリ、と噛み締めた歯が軋む。気分は最悪。結末も最悪。体調も最悪。最悪ずくめの現状は、到底トパーズにとって納得できる結果ではない。
迷いながらもトパーズは痛む腕を上げてタマキにかざす。纏わせた電気が放電して音を奏で始める。

(ワタクシは独りじゃない)

ボロボロになったタマキの顔を見て、彼女が言い放った言葉が不意にトパーズの頭に過った。彼女の言葉は、持ち得たものの戯言だ。世の中には独りで孤独に、だが強く生きていかなければならない者は多くいる。世界に溶け込めず、頼る寄る辺を持たない者は多くはないとはいえ珍しくもない。自分も、そんな世間の当たり前を与えられなかったはみ出し者だ。
だがもし、もしも独りじゃない、そう思わせてくれる人が居たならば――

「……テメェのこと、実はそんなに嫌いじゃなかったのかもな」

 ふと漏れた言葉。その呟きに、トパーズは慌てて口を抑えた。

「何言ってやがんだ、私は……」

 有り得ない。自分はこの女の事が心底嫌いなはずだ。孤児のくせに愛されて、裏切られたくせに簡単に他人を信用して、序列に価値を見出さなくて私の価値を否定して、ヴァイスに来た時は無感情で無口だったくせに、私が話しかけてもまともに反応しなかったくせに、段々と表情豊かになっていきやがって。「毎日が楽しい」みたいな顔をしやがって。

「これじゃまるで……」

 まるで、私が――
トパーズは強く頭を振って、その先の言葉を飲み込んだ。思考さえも強引に遮り、奥歯を強く噛み締めた。そうして眉間に深く皺を寄せてタマキを睨みつけると、右腕に纏っていた電圧を上げていく。

「これで本当に最後だ。あばよ、同胞」

 別れを告げて、最後の電撃をタマキに向けて放つ。
だが――

「そいつは困るな」

 その直前、トパーズの体が大きく跳ね飛ばされた。全身を同時に殴られた様な衝撃で一瞬意識が飛び、気がついた時には視界の中の世界は忙しなく変化していた。
それでも素早く体勢を空中で整え、膝を突きながらも着地。飛び込んできた声の方向に向き直り、そこで薄暗い中に佇む影の存在を認めた。

「こっちはそいつの救出もダチに頼まれてるんでな。アンタにとっては残念だけどよ、こっちとしても約束を破るわけにゃいかねーんだ。今なら見逃してやるから、さっさと消えな」
「誰だよ、テメェは」

 カラカラと車輪が回転する音。微かに残った非常灯に照らされた真紅の髪。タバコを咥えた柏木ミサトは、部屋の入口にリンシンを降ろしてじっとしているよう告げると、車いすの車輪を両手で回して部屋の中央へと進んでいく。

「たいしたモンじゃねーよ。単にダチからダチのダチを無事に連れて帰るよう頼まれた通りすがりだ」
「ダチダチうるせぇんだよ。ケッ、何が通りすがりだ。ンなヤツがこんな場所まで来るわけねぇだろうが。ざけてんなぁ、オイ」

 とぼけた様子で嘯くミサトに、トパーズは警戒も露わにミサトを見据える。
この部屋の惨状を前にして欠片の動揺も見せず、気負った様子も無い。言葉通りの人間では無いだろが、それにしても落ち着きすぎている。部屋の惨状も、自分とタマキの状態を見てもまるで興味が無さそうで、薄く笑みを浮かべてはいるがその実、感情が廃され過ぎている。何より、ミサトの眼差しにはトパーズも覚えがあった。

「その眼……テメェも同じ穴の狢か」

希望も期待も全てが幻想だと悟りきって諦めた瞳。そんな眼をする人間はつまるところ、トパーズと同じ光が当たる事のない世界で生きる人間だ。そして、そんな組織はヴァイス以外にも幾つか存在するのをトパーズは知っている。
トパーズの確信を持ったつぶやきに、ミサトは「へぇ」と感嘆の声を上げ、大仰に両手を叩いてみせた。

「さすがさすが。ヴァイスの元序列七位は見る目が違ぇちげぇな」
「……本当にテメェ、何モンだよ」

 的確にトパーズの正体を言い当てたミサトに、再度トパーズは尋ねる。

「誰も彼も『誰だ』『誰だ』って、そんなに俺の事が気になんのかねぇ」
「名前を名乗るくらい大したことじゃねぇだろうが。さっさと答えろよ」

 渋るミサトにトパーズは急かしながらも、戸惑っていた。先程から頭の中では警報が鳴り響いている。名前を聞く、ただそれだけの行為なのに、そんな事が禁忌である様にトパーズは背中に戦慄を覚えた。
そしてミサトが名乗る直前、改めて真紅の髪を見た途端に一つの名前がトパーズの脳裏に浮かんだ。

「真紅の髪……柏木ミサトか……っ!」
「へえ、よく分かったな。俺も有名になったもんだぜ」
「『最強』、いや、『最凶』かよ……!」

 対峙する相手の正体に、トパーズは大きく顔をしかめてみせた。
「最凶」柏木ミサト。かつての魔物との大戦の中で活躍し、世界の救世主となった四人の魔法使いオリジン。その中でも最も多く敵を殲滅し、魔素技術の発明においても最も貢献した人物。空間魔法によってどれだけ強大な敵であっても単騎で撃滅し、またその魔法の汎用性を駆使して広範囲で魔獣を壊滅させた実績は、魔素技術を学ぶものだけでなく、一般的な歴史教科書にも大きく記載されている。
また最初に魔素方程式の「空間」に関する論文を発表し、その論文を元に他の英雄たちもそれぞれ特異とする要素に関する魔素方程式を発明したと言われており、彼女の存在なしでは現在の魔素技術は存在しないとまで言われる。さらに四人の魔法使いの特性が異なるため、単純な戦力比較は出来ないが、単純な戦闘となった際にミサト以外の三人が協力したとしても有識者は口をそろえて柏木ミサトが最後には立っているだろうと評する。故に「最強」。
そして同時に、自らに害するような相手には、例え同じ人間であろうとも容赦せずに殺戮を繰り返したとも言われる。誰彼構わず狂ったように魔法を行使して敵対するものを必ず消す。故に「最凶」。
その扱いづらさからどこかの施設に半ば幽閉されている、という噂を聞いていたが、そんな相手が今、トパーズの目の前に居る。コイツの交友関係はいったいどうなってやがる、とトパーズは気を失ったままのかつての同僚を睨みつけた。
最悪だ。トパーズは内心で自身の不幸を罵った。

「まあンな訳だ。だからそいつは返してもらうぜ」
「断る」

 ミサトの提案を、だがトパーズは一蹴した。
正直なところ、トパーズとしてはタマキを返すことに問題はない。今の状態ならタマキがこれ以上何かをするとも思えない。殺そうとも思ったが、自爆なんて結末を許容するくらいならいっその事逃してしまって、その上で納得できる再戦を迎える方がよっぽどマシだ。一応この施設の警備、ということで依頼を受けている身ではあるが、相手が柏木ミサトであると言えば恐らく何のお咎めは無いだろう。咎められて誰かに始末されそうになったとしてもそれはそれ。単純に返り討ちにするだけだ。

「そいつを助けたけりゃ私を倒していきな」

 しかし、トパーズはミサトと対峙することを選んだ。それはトパーズがこだわり続けた強さへの渇望ゆえだ。誰にも支配されない、誰の下にも付かない。媚びず、へつらわず、自力で自分のためだけに生きる。
今、自分にはそれだけの力を持っているのか。目の前の相手は人類最強。相手に不足は無い。自分の力を試すことをトパーズは選んだ。

「――そうか」

 ミサトが真紅の髪を掻き上げた。
それと同時にトパーズの周囲で魔素が励起し、雷撃がミサトに飛来した。
車いすに座ったまま、ミサトの体が車いすごと浮き上がる。着弾地点が爆発し、戦闘の開始を如実に告げた。
続けざまにトパーズが詠唱。それと同時にタマキの爆発で辺りに散らばっていたパイプや鋼材などが磁気を帯びていく。パチパチと放電音を放ち、小刻みに震えるそれらが一斉に宙に浮かび上がった。

「へぇ……」

 ミサトもまた宙に浮かんだまま、持ち上がっていく自分を狙う凶器の数々に感嘆の声を上げた。だがその眼に恐れは無く、ただ感心の色だけがあった。
鋭い切っ先を持つパイプがミサトに襲い掛かる。その一本を皮切りとして宙に浮かんでいた鋼材が次々と迫り来る。高速で飛来するそれは、それぞれが一撃必殺の威力を帯び、それを証明するかのようにけたたましい音を立てて壁に、床に突き刺さる。

「詠唱速度、魔素の励起速度、魔術の威力。どれをとっても一級品だ。特性を理解した応用力もあるし体捌きと戦闘時の位置取りも標準を遥かに超えてる。さすがはヴァイス有数の戦闘員だな」

 しかしミサトはそれらをことごとくかわしていった。氷面上を滑るように車いすを移動させ、どこに攻撃が着弾するかを予め知っているかの様に涼しい顔をしてそんな論評を口にする。

「オラオラァッ!! どうしたどうしたぁっ! 世間じゃ英雄なんざ持ち上げられてんけどさっきから逃げまわってるだけじゃねぇか! テメェの実力はンなもんかよぉ!」

 絶え間なく鋼材が降り注ぎ、その合間にも自身の腕から電撃を発するトパーズ。飽和攻撃とも言える弾幕だが、ミサトはその中でも僅かな隙間を縫って移動しかわしていく。
トパーズは攻撃の手を緩めない。複雑な演算とコードの描画、そして特殊な声帯による多重詠唱を繰り返していく。その最中に口からはミサトを挑発する言葉を吐きながら、その実、トパーズは焦りの中にいた。
一方的に攻撃を加えているものの、ミサトの表情に焦りは無い。車いすに乗っているにも関わらず自在に三次元的な動きを駆使し、欠片のダメージも与えられていない。
ズキリ、とトパーズの頭が痛む。
魔術の行使には、半無意識的に膨大な演算を必要とする。脳の演算領域には魔術一つを行使するにも多大な負荷が掛かり、ましてトパーズの生命線は魔術の連続行使だ。その負荷が頭痛となってトパーズに警告を発する。
タマキとの戦いで絶え間なく魔術を行使し、ほとんど休憩もなくミサトとの連戦だ。魔素自体は大気中にあるものを使用するため枯渇することは考えられないが、タマキの攻撃によるダメージと度重なる魔術の使用による負担で、すでにトパーズの体の限界に達しようとしていた。

「しゃらくせぇっ!!」

 故にトパーズは決断した。おそらく、いや、間違いなくミサトは自分の事を舐めている。トパーズの知るミサトの実力ならばすでにトパーズに一撃や二撃反撃をしてきてもおかしくはない。にも関わらず先程から逃げてばかりなのがその証拠だ。もしくは、トパーズが限界に近いのを察して力尽きるのを待っているのかもしれない。だとしてもそうする意味は分からないが。
トパーズは詠唱を止めた。変わりに普段行使するよりも遥かに長い呪文を口にして丹念にコードを描いていく。
その様子を眺めながらミサトは動かない。攻撃をするでもなく、これから何が起こるのかを楽しみにしているかの如く薄い笑みを浮かべていた。
トパーズは更に演算を続ける。頭は割れんばかりに軋み、視界がぼやける。血管が千切れ、高い鼻から鼻血が流れ落ちる。だが彼女は巨大なコードを描き続けた。

「これは……」

 ミサトの表情が変わった。
トパーズの頭上では膨大なエネルギーが渦巻き始めていた。手のひら大だった光球は急激な成長を続け、彼女がタマキへと放った光球よりも遥かに巨大で強大な塊が威圧的に見下ろしていた。
トパーズは痛む右手を空にかざした。光球の周囲ではプラズマと化した空気と魔素が威嚇するかの様に細かに破裂音を奏でている。これまでにない圧倒的な暴力の塊がそこにはあった。
まさに全力を捧げた一撃、必殺。

「これなら…避けれねぇだろぉ……!」
「逃げろリンシンっ!!」

 振り返ってミサトが叫んだ。
同時――

「――私の、勝ちだ」

 トパーズは嬉しそうに笑った。
 そしてトパーズは右腕を振り下ろす――


 その直前、トパーズの体が吹き飛ばされた。一切の反応もできず壁に叩きつけられ、意識を刈り取られたトパーズは力なく崩れ落ちる。うつ伏せに倒れ伏していくトパーズの体だったが、倒れきる直前にミサトに受け止められた。
車いすから飛び出したミサトは、一瞬の内にトパーズの元へ移動。トパーズの体を抱きかかえ、彼女の作り出した光球を鋭く見据える。
創作者が意識を無くし、制御を失ったそれは不気味な動きを始めた。縮小と膨張を細かく繰り返し、放つ光は瞬く間に強くなっていった。それはまるで、行き場を失ったエネルギーが暴走しているようで――
――爆発する
迫り来る未来に、リンシンが衝撃に備えて身を丸くして顔を背けたその時、ミサトが一言、呟いた。

解呪ディスペル
 同時に光球を覆っていた魔法陣が光を失っていく。光球に込められていた魔素が霧散し、今にも爆発しそうだったそれは次第に穴の空いた風船の様にしぼんでいく。そして「パァン」と小さな破裂音を響かせてあっという間に消えていった。
静寂が戻った。

「……もう大丈夫なのですか?」
「ああ、もう心配いらねーよ」

 リンシンはそっと声を掛け、恐る恐るといった様子で脚を引きずりながらミサトへ近づいていった。

「……殺しましたのですか?」
「いんや、単に気を失っただけだ」

 リンシンの問い掛けにミサトは腕の中でグッタリしているトパーズを見ながら応え、「よっと」と掛け声を上げながらトパーズの体を肩にかついだ。

「中々いい腕してっからな。殺すにゃ惜しい人材だよ。それに俺はこういう眼をしてる奴が嫌いじゃねー」
「でもその人はタマキお姉さんを……」
「ンなこたぁ俺は知ったこっちゃねーよ。俺は単に『朝霧タマキと獏を助けろ』としか頼まれてねーし、後は俺の自由にさせてもらうぜ」

 そう言いながらミサトはタマキの体を浮かせ、リンシンの頭をガシガシと乱暴に撫でるとリンシンも浮かせて車いすへと戻って座り直す。

「んじゃさっさと行くぜ。早ぇとこ片付けねーとコイツも死んじまいかねねぇし。俺は約束を破んのは嫌いなんだ」

 ミサトの言い分にリンシンは何か言いた気であったが、続いたミサトの言葉に口を噤んだ。タマキの全身はリンシンから見てもひどいもので、生きてはいるものの満身創痍という言葉でさえ生ぬるい程だ。どういうわけか腹の傷からの出血は止まってはいる様だったが、一刻も早い治療が必要なのは見るからに明らかだった。
それに、リンシンの本来の目的は囚われの両親を、そして仲間の獏たちを助けること。いまいちミサトの正体が知れないが、味方であることは間違いはなさそうだし、何より、彼女の実力であれば奪還は容易に思えた。トパーズに対する蟠りを期待の方が上回り、リンシンは気持ちを切り替えて前を進みながら大きくアクビをするミサトの赤い髪を見つめた。
そして、事態は彼女の想像を遥かに超えて推移した。

「ふわぁ……眠てーし――それじゃ、サクッと終わらせちまうぜ」

 ――三十分後


、一つのビルが崩壊したとの通報が警察へと届けられた。





警備員の魔術師たちから逃げながら、リンシンは出口を探す。 急がないと両親だけでなくタマキも危ないと焦るが、追われながらなので出口を中々探せない。 おまけに基本一本道で、実は出口はこちら側には無かった。 途中、銃撃で脚を負傷。それでも何とか逃げるが、天井を破って目の前に女性が現れ、挟まれて絶体絶命。 とおもいきや、 「しゃがめ」 指示に従ってしゃがんだリンシンの上を色々な建材が飛んでいき、追ってきた警備員をなぎ倒していく。 「無事か?」 リンシンを保護するミサト。 タマキとトパーズの戦いその二。 苦戦しつつも何とかトパーズを倒す。 そこでミサトとリンシンと合流。意識を失う直前、「後は任せとけ」とミサトが全てを終わらせる。 ヒカリがスバルに連絡。協力を求める。 →タマキが魔技総研に行く。(ミサトに協力を要請) ユキヒロ:ヒカリ、スバル 魔技総研:タマキ、リンシン、ミサト ノバルクス:コウジ、サユリ
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